育毛剤、発毛剤の区別がよく分からないように、育毛サロン、発毛サロン、増毛サロンの定義もあいまいです。科学に基づいた診断や治療を行う病院とは違い、それぞれの業者が独自の育毛剤を販売したり、マッサージなどの施術を行っているからです。

しかし、まだ男性型脱毛症のメカニズムが不明で、これを診る皮膚科医も少なかった数年前まで、薄毛が気になる人はこうしたサロンを頼りがちでした。

その結果、抜けた頭髪が回復するどころか、頭皮まで傷めたり、不当に高い料金を払わされた人が数多くでてしまいました。消費者の生活相談を受けつけている「国民生活センター」にも、育毛や発毛効果を謳うサービス業者への苦情が多数寄せられています。

国民生活センターが「育毛サービス」という調査項目を設けたのは2000年からで、その相談内容から同センターがまとめた「育毛サービス」の問題点は、以下のようなものでした。

・医学的根拠が定かではないのに、「○○脱毛症」などと診断する
・「必ず髪の毛が生えてくる」、「必ずもとのようになる」などのうたい文句で、不適切な勧誘をする
・ヘアケア商品を次々と勧められ、高額な契約になるケースがある
・6ヶ月など長期間の契約を途中で解約しようとしても、商品が納入済であることを理由に返品、返金を認められないケースがある

男性型脱毛症の患者さんは、他人の目、とくに「女性の目が気になる」という人が多いのです。20代、30代の若者なら、こうした気持ちは中年以降の患者さんより強いかもしれません。そんな心情を利用するかのように、「育毛」「発毛」の文句を餌に高額を取るサービス業者も少なくないようです。

20歳の相談者のケースでは、最初のカウンセリングで抜け毛の原因を特定され、「治る」と断定されて総額約50万円のヘアケアコースを契約しました。しかし、契約時に購入したヘアケア商品を使うと頭に刺激を感じ、頭皮が真っ赤になり、サービス業者にそれを訴えると「それは血行障害だから」とマッサージ器の購入を勧められたそうです。

また、これも20歳代方のケースですが、やはり「確実に治る」と説明されて165万円のコースを分割払いで受けることにしました。しかし、2回サービスを受けたところで解約を申し込むと、違約金として30万円の支払いを請求されたそうです。

育毛サービスと業種が似ているエステティックサービスには、特定商取引法で「特定継続的役務提供」として規制があり、中途解約時に支払う額の上限が定められています。しかし、育毛サービスには、法的規制はありません。

このため業界団体である「日本毛髪業協会」がクーリングオフ制度や中途解約に関する自主基準を定めています。これによると、「絶対治る」といった表現や、「このままではもっと抜ける」など利用者の不安をあおるような表現があった場合、契約の取り消しができることになっています。

しかしながら、日本毛髪業協会に加盟していないサービス業者もあり、サービス業者と利用者のあいだで「言った」「言わない」の押し問答になるケースもあるようで、トラブルはなかなかなくなりません。

しかし、国民生活センターへの相談件数で見ると、年々少しずつ減る傾向にあります。この傾向は、男性型脱毛症のメカニズムがネットで容易に検索できるようになったり、病院でも治療が始まったことが背景にあると思われます。もしいま、育毛サロンでのサービスを受けたいと考えておられたら、病院の皮膚科、あるいは脱毛症外来を選択肢に入れるべきでしょう。