髪の毛が大事なのは、なにも外見上のイメージだけではありません。皮膚科医師から見ても、日常生活をつつがなく送るうえで髪は非常に大切なのです。

髪や体の毛を失うことで、私たちは実に多くの不利益を被ります。では、髪の毛には、どんな存在意義があるのか。それを説明する前に、まず毛髪全体についてお話しします。

毛髪は体の至るところにある

毛髪は人の毛の総称で、表皮より発生する皮膚の一部です。このため、毛髪に関する病やトラブルは皮膚科の医師が診ているわけです。

ヒトの身体には、手の平や足の裏、唇などを除くほぼ全身に、合計およそ500万本もの毛が生えています。それをさらに詳しく見ていくと、軟毛、硬毛(終毛)の二種類に大別されます。軟毛と硬毛は、名称の通り柔らかい毛と硬い毛。硬毛はさらに、長毛(頭髪、ひげ、腋毛、陰毛など)と、短毛(眉毛、まつげ、鼻毛など)に分類されます。

軟毛、硬毛どちらにも色がついていますが、軟毛のほうが硬毛より一段と細く短い、というのが両者の見かけ上の違いです。しかし実は、このふたつを正確に分ける境界線ははっきりしていません。

さらに言えば、軟毛、硬毛の二種類はまったく別個のものではなく、さまざまな因子の影響で入れ替わることもあるのです。たとえば、男性ホルモンの影響で、軟毛だった成人男性の頭髪が軟毛化したりすることもあります。

実は、「ハゲる」という現象は、硬毛だった頭髪が軟毛化することでもあるのです。

毛髪の働き

さて、毛髪は、皮膚の表面に対して斜めに傾いています。体内で熱を生み出し、常にこれを一定に保たなければならない恒温動物にとって、斜めに生えた毛は保温に欠かせません。

多くの動物では、皮膚が雨に当たった場合、雨滴は毛の生えている方向に沿って下に流れ落ち、体温が急激に低下するのを抑えてくれます。また太陽の紫外線など、身体に有害な光線をさえぎる役割もあるのです。

そのほか、身体にものがぶつかったときのクッションになったり、けがをしたときには治癒を促進してくれますし、表皮にとっては皮脂を供給する機能も果たしています。

人間の頭部の毛に限って考えても、頭髪の異常が病気のサインになることもあれば、頭皮が直接紫外線を浴びるのも防いでくれます。日常生活では案外頭をぶつけることも多いものですが、頭部のけがの軽減にも髪の毛は大いに必要だと言えます。

さらにまつげはほこりや汗が目に入るのを防いでくれますし、鼻毛は鼻で呼吸するとき異物の侵入を防いだり、冷たい空気を少し暖めてから喉へ送るなど、ろ過装置的な役割があるのです。腋毛や陰毛にしても、摩擦による皮膚の傷害を軽減してくれます。

このように毛髪には様々な働きがあります。