近年、毛包を構成する細胞の培養技術や遺伝子解析手法の発達によって、毛周期や男性脱毛症の発症メカニズムが明らかにされ、毛乳頭細胞が薬理作用のターゲットとして注目されています。これに伴って1900年以降に開発された有効成分はどう作用するのか、ヒトでの使用効果はどうなのかが公表されるようになってきました。

いまのところ、アメリカのFDAで脱毛改善効果が認められている外用薬(塗り薬)は、ミノキシジルだけですが、日本でもミノキシジル1パーセント溶液(商品名:リアップ)が市販されています。

ミノキシジルの効果働き

ミノキシジルは血管拡張作用がある薬物で、本来は降圧剤として開発されましたが、副作用に多毛が認められることを利用して、発毛の外用薬として用いられるようになったものです。血管拡張作用として効果を発揮しているというよりは、毛乳頭細胞に働きかけてアデノシンを分泌させ、VEGFやKGFなど細胞増殖因子の産生を促すことで効果を示す、と報告されています。

ミノキシジルを使用し始めて1~2ヶ月経った頃は、まれに抜け毛が増えたように感じることがあります。これは休止期にあった毛包が成長期に入るため古い頭髪が抜けているのであって、やがて成長した頭髪になってきますので心配はいりません。

ところで、現在日本で発売されているミノキシジルは、長い間1パーセント溶液のみでしたが、アメリカなど国外では、すでに高濃度の製剤(2~5パーセント)が市販されています。1パーセント溶液より2パーセント溶液、それより5パーセント溶液のほうが効果的だと証明され、濃度がしだいに高まってきたのです。

日本とアメリカの違い

それなのに、日本では1パーセント溶液しか入手できない期間が長く続きました。これにはわけがあります、日本でミノキシジル溶液を発売しているのは大正製薬ですが、同社はこれを「一般用医薬品」としてアメリカから日本に導入したのです。

一般用医薬品とは、医師の処方箋がなくても薬局などで買える薬のことで、業界ではOTCと呼ばれています。OTCとはオーバー・ザ・カウンター・ドラッグの略で、要するに「薬局のカウンターの向こうに並んでいる薬」という意味です。

日本の薬局では、医師が処方する医療用医薬品として長年使われ、効果や安全性が確認された薬が、病院で処方されるものと同様、あるいはより少ない成分量で商品化され、一般医薬品として売られています。ところが大正製薬は、ミノキシジルを医療用医薬品としてではなく、一般用医薬品として始めから薬局で売るという、日本では前例のない方法をとったのです。

そのために申請から導入まで、10年以上もかかってしまいました。申請した当時、ミノキシジルを入手するにはアメリカでも医師の処方箋が必要で、種類も2パーセント溶液しかありませんでした。

しかし、日本に導入されるまでの10年間に、アメリカではこれが一般医薬品となり、5パーセントまで濃度があがっていったのです。日本での申請は1パーセントで行い、大正製薬はこれで承認をとったので、アメリカではより濃度の高い商品が発売されていても、日本では1パーセントのものしか発売できませんでした。

その後日本でも、ミノキシジル5パーセント製剤の臨床試験が行われ、2009年6月には「リアップX5」という商品名で、市場に登場しました。ただし、適応は男性のみで、女性の方は顔の多毛の副作用が懸念されるため、従来どおりの1パーセント製剤を使うことになります。