近年、いろいろな病気の診断や治療法を標準化することが行われています。いわゆる診療ガイドラインです。数多くの治療方法についてEBM(科学的根拠に基づいた治療)が重視され、二重盲検比較試験の結果がもっとも高く評価されるのですが、残念ながら円形脱毛症の治療についてはそのようなデータはほとんどありません。

その理由としては、かなりの患者さんが自然軽快するため、有効性を評価するのに困難を伴うためです。

また、円形脱毛症の治療方法はこれまで数多く提案されてきましたが、個々の患者さんにとってどの方法がいちばんふさわしいかを選択するのは、とても難しいと言わざるを得ません。

そこで日本皮膚科学会では、皮膚科専門医による円形脱毛症の治療に日本のスタンダードを作る必要があると考え、現在12施設の専門医による治療ガイドラインを作成しています。作成にあたっては国内外のあらゆる文献を調べ、またアロマテラピー、漢方薬治療など、円形脱毛症治療として行われてきた方法すべてを全員で検証し、科学的根拠や信頼性を評価しています。

一方、アメリカではすでに診断ガイドラインが作成され、従来の病型分類に加えて脱毛面積から重症度を5段階に分類しています。その考えに基づいた予後(病気の経過)をご紹介します。

アトピー性疾患や内分泌疾患にかかったことがなく、脱毛箇所も少数で、個々の脱毛継続期間が一年足らずである場合、80パーセント程度の患者さんでは、一年以内に毛髪が回復することが日本から報告されています。しかしながら、再発する例も多いようです。

また欧米の複数の施設からは、つぎのような報告がなされました。34~50パーセントの患者さんは一年以内に毛髪が回復しますが、15~25パーセントは全頭型や汎発型へ移行し、その場合には回復率は10パーセント以下と考えられています。

17年間にわたり経過を観察した報告によると、成人では脱毛面積が50パーセント以下の場合、56パーセントが回復しますが、より広範囲の脱毛面積の場合、回復率はわずか3.7パーセントでした。15歳以下で発症した場合や、蛇行型の回復率も低くなっています。

以上の報告から考えると、単発型あるいは多発型でも脱毛箇所が数個程度の場合、発症後1年以内は経過を観察するだけでもよいと思います。また全頭型で経過の長い方は汎発型の場合、特別な治療はせず、初めからカツラなどの使用を検討するのもひとつの方法かもしれません。