円形脱毛症と言っても、症状やタイプがいろいろとあることがお分かりいただけたと思います。ところで、円形脱毛症はどのような理由で発症するのでしょうか。

「強いストレスを感じると円形脱毛症になる」

一昔前まで、世間ではよくこう言われていました。この説は、あながち間違いではありません。ストレスが円形脱毛症を引き起こす例もあるようですが、しかしその場合のストレスはあくまで誘因のひとつであり、直接の原因ではありません。

では、原因は何か。まだすべては解明されていないのですが、最近の研究で確定的になったことがあります。多発型より重症のタイプの円形脱毛症は、医学用語で言われる「臓器特異的自己免疫疾患」である、ということです。

通常の免疫反応とは、自分の体にウイルスや細菌などの異物が侵入してきたとき、リンパ球が抗体を生み出して外敵を攻撃したり、直接排除したりするものです。ところが、何らかの原因で自分の体の成分を「異物」と認識して攻撃し、破壊してしまうことがあります。これが、いわゆる自己免疫疾患です。円形脱毛症の場合、髪の毛の細胞だけを限定攻撃するための髪の毛は抜けますが、ほかの臓器には影響がありません。

円形脱毛症の患者さんを診察して病理組織検査をすると、脱毛部分の毛包のなかや周辺が炎症を起こし、リンパ球がそこに集まっているのが見られます。リンパ球のなかにも免系反応を促進するもの、抑制するものがありますが、そのバランスが崩れることで自分自身の細胞などを攻撃し、脱毛を引き起こすのです。

この病気の発症や発症率には人種的差異がない、と考えられています。アメリカのある小さな町で調べた疫学データによると、円形脱毛症の発症率は2パーセント。日本のデータはありませんが、これとほぼ同じぐらいでしょう。

子供から大人まで幅広い層の方がかかりますが、15歳以下の患者さんが全体の20パーセントぐらいです。なかには1歳ぐらいで発症するお子さんもいますが、外来受診されるのは、20歳代の若い患者さんが多いようです。

また近年の研究では、円形脱毛症の患者さんのうち、30~40パーセントは遺伝的要因があると分かりました。橋本甲状腺炎などの自己免疫による甲状腺疾患、膠原病、白斑、重症筋無力症といった自己免疫疾患の患者さんが、高い確率で円形脱毛症も発症します。

アトピー性皮膚炎の患者さんが円形脱毛症を発症しやすいことも、以前から知られていました。とくに若い患者さんに、アトピー性皮膚炎を合併している方が目立ちます。1987年から2001年まで、国立小児病院(現・国立成育医療センター)を受診した円形脱毛症の子供のうち、56パーセントがアトピー性皮膚炎にもかかっていたとのレポートもありました。