塗り薬のミノキシジル、飲み薬のフィナステリド。現況では、このふたつが男性型脱毛症の中心的な治療薬となっています。しかし、両方とも保険の適用はありませんので、薬局で購入するか、フィナステリドを病院で処方してもらう場合は自費診療になってしまいます。

現在、保険診療で処方可能な薬剤は円形脱毛症や男性型脱毛症に適応がある塩化カルプロニウム液(商品名:フロジン液)だけです。ただし、男性型脱毛症用の育毛剤、発毛剤として商品化されているものは数多くあります。たとえば、ミノキシジルが毛乳頭細胞に働きかけて分泌するアデノシンそのものを含有する育毛剤も開発されました。これはすでにヒトでの改善効果も確認され、「薬用アデノゲン」という商品名で製品化に至っています。

男性型脱毛症では、男性ホルモンによって毛乳頭細胞から分泌されるTGF-βが重要なメディエーター(仲介役)として働いていると推測されています。このTGF-βの作用を抑制するのがt-フラバノンです。t-フラバノンは、ヒトにおける30週連用試験でも有意差が認められて、「サクセスバイタルチャージ薬用育毛剤」の名称で販売されています。

また、男性型脱毛症を発症した患部とそれ以外の頭部毛包から毛乳頭細胞を培養し、マイクロアレイで遺伝子発現を観察比較したところ、罹患部ではエフリン(細胞間シグナル分子)やBMP(骨形成因子)の発現が低下していました。6-ベンジルアミノプリンを主成分とする「薬用毛髪力イノベート」は、これらを活性化する働きをもっています。

育毛と発毛の違いは?

「育毛」「発毛」という言葉の使い分けは、実は非常にあいまいです。日本で購入できる薬は「薬事法」によって定められていますが、まずそれをみてみましょう。

薬事法とは、「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」の規制や運用についての法律です。市販の育毛剤、発毛剤には、このうち医薬品もあれば、医薬部外品もあります。

では育毛・発毛剤に限ると、医薬品と医薬部外品では、効果がどう異なるのでしょうか?

薬事法によると、医薬品の効能は「壮年性脱毛や円形脱毛症における発毛、育毛及び脱毛の進行予防など」となっています。これに対して医薬部外品の効能は、「脱毛予防、発毛・育毛の促進など」。このように区分しているのは日本だけのようですが、これの何がどう違うのかの判断はとても難しいのが現状です。

そればかりか、この両者の区別はどう考えても科学的ではありません。有効成分として、従来は血行促進作用や栄養補給、抗炎症作用などが謳われてきましたが、これが毛包に対する直接的作用かどうかはエビデンス(科学的根拠)が乏しいのです。

市販の育毛剤や発毛剤を試して「よく効いた」と言う方もおられるでしょうが、いま現在薄毛で悩んでおられる方は、薬を選ぶ前に脱毛症外来を設けている病院で専門家に相談してみてはいかがでしょうか。